企業動向

サイカルトラスト、AI基本計画素案に提言 ブロックチェーンによるサプライチェーン真正性の国家戦略化を


サイカルトラスト株式会社は2026年6月24日、内閣府の「人工知能基本計画(素案)」に対し、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンの真正性に関する国際標準化を国家戦略の柱とすることを求める提言を発表しました。同社は、AI時代の新たな脅威である「真正性攻撃」に対抗するため、「ISO 26345」の思想を国の基本計画へ接続することを目指しています。

サイカルトラスト、AI基本計画素案に提言

2026年6月24日、サイカルトラスト株式会社(東京都渋谷区)は、内閣府が意見募集を行った「人工知能基本計画(素案)」に対し、ブロックチェーンを用いたサプライチェーンの真正性(トラスト)に関する国際標準化を国家戦略上の施策として明確に位置付けるよう求める意見(パブリックコメント)を提出したことを発表しました。同提言は、前日の2026年6月23日に同社が日本代表として全会一致で国際標準規格採択(NP)を実現した「ISO 26345」の思想を、国の基本計画へ接続することを目的としています。

AI国家戦略と信頼層の構築を描いた画像

AI時代の新たな脅威「真正性攻撃」への備え

同社は、高性能AI(フロンティアAI)の時代には、「情報が本物かどうか」を見抜く仕組みを国の標準として用意すべきと提言しています。例えば、「お城」を守る場合、これまでは「城壁を高くし、城門を固く閉じる」ことで不審者の侵入を防ぐことが重要でした。しかし、高度自律型AI(クロード・ミュトス級AI)のような新しい時代の脅威は、城壁を壊すのではなく、「本物そっくりの偽の命令書や偽の伝令」を城内に送り込み、城の人々に本物と信じ込ませて自ら門を開けさせてしまうと指摘されています。

このため、今後は「門を固める守り」に加え、「届いた命令書や伝令が本物か偽物かを見抜く目利きの守り」が必要不可欠となります。サイカルトラストの提言の核心は、この「真贋を見抜く仕組み」を日本が世界に先駆けて国際標準規格へと昇華させることにあります。

デジタルセキュリティの概念図

提言の三つの要点

サイカルトラストが意見を提出した箇所は、「人工知能基本計画(素案)」の第3章・第3節「AIガバナンスの主導」です。同箇所では、国際標準規格づくりへの参画先として「ISO/IEC JTC1」のみが挙げられ、ブロックチェーンを所掌する「ISO/TC307」が記載されていませんでした。同社はこの「抜け落ち」を補うよう求めました。

提言の主な要点は以下の三つです。

  • 国際標準規格化の参画対象の補完: 「ISO/IEC JTC1」に加え、「ISO/TC307」で扱うブロックチェーンを利活用したサプライチェーンの真正性(CoP:来歴連鎖)を明記すべきとしています。

  • AIモデル評価だけでは塞げない空白: 「高度自律型AI」による「正規を装った偽の証跡・記録・出力」への備えには、「偽の情報・偽の指示・偽の動作を見破る真正性(トラスト)担保・検証する仕組み」が国際標準規格層に不可欠であると強調しています。

  • 「オープン・アンド・クローズ戦略」=国益視点: 国際標準(オープン)と特許群(クローズ)を両輪とする取り組みが、「ルールテイカー」から「ルールメイカー」への転換と経済安全保障に資するため、「ISO 26345」のような日本発の国際標準規格を政府の支援対象として明確に位置付けるべきとしています。

AIガバナンスの全体像を示す図

高度自律型AIが生む「本物そっくりの偽物攻撃」

「人工知能基本計画(素案)」は、自ら計画を立てて動く「高度自律型AI(Agentic AI)」、すなわち「クロード・ミュトス級AI」の急速な伸長と、そのAIがシステムの脆弱性を見つけ攻撃手順を組み立てる新しいタイプのサイバー攻撃への懸念を明記しています。同社は、AI時代の脅威の本質が「侵入」だけにとどまらないと指摘しています。

「高度自律型AI」は、本物と見分けのつかない偽の送金指図、偽の検査証明、偽の監査ログ、偽のAI分析結果を大量に作り出せるといいます。これらは「正規の形式」をまとっているため、人や既存システムには「本物」として受け入れられてしまう可能性があります。サイカルトラストは、サイバー攻撃の脅威が従来の「システムへ侵入する攻撃」から、「正規の情報を装った偽情報を信頼させ、採用させる攻撃」へと拡張していると捉え、こうした新たな攻撃類型を「真正性(トラスト)攻撃」と定義しています。

サイバーセキュリティの脅威と防御システムを描いた画像

「侵入を防ぐ守り」と「偽物を見破る守り」の補完関係

同社は、「侵入を防ぐ守り」と「偽物を見破る守り」は対立するものではなく、二つがそろって初めて社会基盤を守れる「補完関係」にあると説明しています。前者は「門と壁を固める門番」、後者は「門を通って届いた命令書や伝令の印章と来歴を照合する目利き」に例えられます。

「侵入を防ぐ守り」の代表例として、ソフトバンクグループの「Patching as a Service」や、政府の「Project YATA-Shield」が挙げられます。これらはシステムの弱点を塞ぎ、侵入を防ぐ役割を担います。しかし、これらの防御策は、「本物そっくりの偽の命令書や偽の伝令」によって門を開けられてしまった場合については原理的に対応できないとされています。なぜなら、これらの守りは「侵入させない・穴を塞ぐ」ことを役割としており、「届いた情報が本物か偽物かを見抜く目利きの守り」までは担保していないためです。

この「高度自律型AI」時代特有の「空白」を埋めるのが、国際標準規格「ISO 26345」であると同社は位置付けています。

サイバーセキュリティの「完全防御」システムが描かれた画像

「オープン・アンド・クローズ戦略」が国益になる理由

「オープン(国際標準)」は、世界中で形をそろえた「共通の乾電池」のようなものと説明されています。一方、「クローズ(特許群)」は、その乾電池の内側で動く「独自技術」にあたります。同社は、どちらか一方だけでは成り立たず、「オープン(国際標準)」と「クローズ(特許群)」を「両輪」として回すことが、日本が「ルールテイカー」から「ルールメイカー」へ転換する現実的な道筋であると指摘しています。

この方向性は、高市政権が掲げる「戦略17分野・61製品/技術」の国際標準化推進や、「統合イノベーション戦略2026」が目指す姿とも整合するといいます。「ISO 26345」の採択は、一民間スタートアップが世界の最前線でこの戦略を先取りした事例としています。

サプライチェーン・トラストの概念図

「ISO 26345」が補完する国際的な座組み

「ISO 26345」は、特定のブロックチェーンやトークン規格を固定しない「実装中立」のフレームワーク規格であり、既存の仕組みに後付けで重ねられる設計です。当該規格が担保・検証するのは、「ひとつの製品の真正性」だけでなく、「数多くの部品が、いつ・どこで・誰の手で組み合わされて1つの製品になったのか」という「つながりの履歴全体」、すなわち「CoP(Chain of Provenance=来歴連鎖)」であると説明されています。

この層は、国内外の主要枠組みと競合せず相互補完します。半導体分野の「SEMI規格(T25)・(T26)」が定めるブロックチェーンを利活用した識別子・ラベルの上に真正性検証レイヤが重なり、米国「NIST」の来歴指針(NIST IR 8419/公開草案 NIST IR 8536)とも矛盾しません。欧州主導の「デジタル製品パスポート(DPP)」の横断委員会「ISO/IEC JTC 5」に対しても、そのブロックチェーンを利活用した真正性検証レイヤを「ISO 26345」が担い得るとされています。

サプライチェーンの真正性確保システム

サイカルトラスト代表取締役 須江剛氏のコメント

サイカルトラストの代表取締役である須江剛氏は、2026年6月23日に一民間スタートアップとして日本代表で国際標準規格をゼロから提案し、全会一致での国際採択を受けた翌日に、その思想を政府の「人工知能基本計画」という最上位の戦略文書へ接続する提言を行ったと述べています。成果を一過性の話題で終わらせず、国家戦略の血肉にしていくことが責務であるとの考えを示しました。

また、AIが人間と見分けのつかない「正規の形式」で情報を生み出せる時代において、防御の重心は「侵入を防ぐこと」と「その情報・指示・動作が本物かを見抜けること」の二つになると指摘しています。「Patching as a Service」や「AISI」の「Project YATA-Shield」が担う「侵入を防ぐ守り」に、「偽物を見破る守り」を組み合わせることで、「高度自律型AI」時代のサイバー防御を全体最適へと近づけたいとし、これが自民党「AIホワイトペーパー2.0」が掲げる「信頼の設計」を技術として具体化する道であると確信しているとコメントしています。

オフィスのような廊下で腕を組む男性

サイカルトラスト株式会社について

サイカルトラスト株式会社は、ブロックチェーンとマルチAI検証を用いて、あらゆる資産の「真正性」「本人証明」「商品の所有者証明」「サプライチェーン・トレーサビリティ証明」「カーボンフットプリント・カーボンクレジット等の環境証明」「CoP(来歴連鎖)」を担保・検証することが可能な「鑑定証明システム®」を開発する企業です。

同社の中核となる特許群は、その基本特許としての功績が認められ、2025年に「発明大賞(発明功労賞)」を受賞しています。また、同社は「ISO/TC307(WG8)」において「ISO 26345」を日本代表として主導しています。

ソース元

サイカルトラスト株式会社 公式Webサイト
https://cycaltrust.co.jp/

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