企業動向

日本のWAF市場、2031年に6億米ドル超か──「2025年問題」とオープンバンキングが成長を牽引


株式会社マーケットリサーチセンターは2026年6月19日、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の日本市場に関する調査レポートを発表しました。このレポートによると、日本のWAF市場は「2025年問題」や金融庁によるオープンバンキングAPIのセキュリティ要件を背景に成長を続け、2031年には市場規模が6億605万米ドルに達すると予測されています。特に銀行・金融サービス・保険(BFSI)セグメントが市場を牽引する見込みです。

日本のWAF市場、2031年に6億605万米ドル規模へ

同レポートによると、日本のWebアプリケーションファイアウォール市場は、2026年から2031年にかけて、その市場規模が6億605万米ドルに達すると予測されています。この成長は、大規模なレガシーメインフレームシステムの普及や、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、そしてWebアプリケーションのセキュリティ確保の必要性といった要因が背景にあるとしています。

市場成長を牽引する「2025年問題」とオープンバンキング

市場成長の主な推進要因として、経済産業省が提起する「2025年問題」と、金融庁のオープンバンキングAPIセキュリティ要件が挙げられます。

「2025年問題」がレガシーシステムの近代化を促進

「2025年問題」とは、COBOLおよびメインフレームプログラマーの退職に伴い、システム障害や保守上の課題が生じるリスクを指します。日本の多くの企業、特に銀行、保険、製造業では、数十年にわたり開発されたレガシーメインフレームシステムが稼働しており、そのWebアプリケーションのフロントエンドは脆弱性が高く、パッチ適用が困難な状況にあるといいます。企業がこれらのシステムをクラウドネイティブプラットフォームへ移行する中で、WAFはモダナイゼーション期間中、脆弱なレガシーWebアプリケーションに対して仮想パッチングを提供する役割を担い、WAF導入の大きな動機付けとなっています。

金融庁のオープンバンキングAPIセキュリティ要件

金融庁は、日本の銀行に対し、口座情報サービス(AIS)および決済開始サービス(PIS)のための標準化されたAPI提供を義務付けるオープンバンキングガイドラインを策定しました。これらのAPIおよびそれらを利用するWebアプリケーションには、APIの悪用、データ漏洩、不正アクセスを防止するためのWAAP(WAF/API)によるセキュリティ保護が不可欠とされており、大手銀行や地方銀行でWAAPの導入が進んでいます。

市場の課題とトレンド

一方で、市場には課題も存在します。メインフレーム上で稼働するCOBOLレガシーWebアプリケーションのセキュリティは複雑であり、パッチ適用が困難な点や、専門スキルを持つ人材の不足が指摘されています。また、データ主権への懸念などから、日本の企業は歴史的にクラウド導入に消極的であったため、オンプレミス型WAFの選好が依然として高い状況です。

しかし、トレンドとしては、メインフレームからクラウドへの近代化に伴うハイブリッドWAF導入が進んでいます。レガシーとクラウドネイティブのアプリケーションが並行稼働する環境では、一貫したWAFポリシーの維持が求められます。また、金融庁ガイドラインに基づくオープンバンキングAPIセキュリティの強化も主要なトレンドの一つです。

各セグメントの動向

エンドユーザー別

  • 銀行・金融サービス・保険(BFSI):メインフレームの近代化や「2025年問題」、オープンバンキングAPIセキュリティ要件により、最大のWAF支出セグメントとなっています。

  • 製造業:ケイレツのサプライチェーンにおけるWebアプリケーションセキュリティ、インダストリー4.0のスマートファクトリー構想、生産システムとWebベースのダッシュボード統合の必要性によって牽引されています。

  • 情報技術(IT)・通信:顧客ポータルやネットワークインフラのWebアプリケーション保護が主な動機付けです。

  • 政府・公共部門:デジタル庁によるデジタル政府の近代化がWAF導入を推進しています。

  • 医療分野:安全な医療データ交換を可能にする「次世代医療基盤整備法」や個人情報保護法(APPI)の下で、電子健康記録(EHR)や患者ポータル保護の必要性が高まっています。

ソリューション別

日本市場では、インフラ管理を重視する企業の傾向から、オンプレミス型WAFが他の先進国市場よりも高いシェアを維持しています。しかし、国内クラウドリージョンの拡大に伴い、クラウド型WAFも急速に成長しており、特にデジタルネイティブ企業、小売、EC業界での導入が進んでいます。ハイブリッド型WAFは、大手企業で一般的に導入されています。

サービス別

マネージドサービスは、サイバーセキュリティ人材の不足やレガシーWebアプリケーションのWAFルール管理の複雑さから、日本において最も急速に成長しているサービス分野です。特に地方銀行や中堅製造業、地方自治体など、専門チームを持たない企業での導入が進んでいます。プロフェッショナルサービスも、WAFの導入・移行やカスタムルールの作成において重要な役割を担っています。

組織規模別

日本のWAF市場は、メガバンクや大手製造業、大手保険会社といった大企業が支出を主導しています。一方で、従量課金制のクラウド型WAFやマネージドWAFサービスの利用が容易になったことで、中小企業も成長著しいセグメントとなっています。

WAFとは

Webアプリケーションファイアウォール(WAF)は、ウェブアプリケーションを保護するためのセキュリティシステムです。悪意のある攻撃からウェブアプリケーションを守り、外部からの不正アクセスやデータ漏洩、ウェブサイトの改ざんを防ぐ役割を果たします。具体的には、HTTP/HTTPS通信を監視し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃を検知して防御するように設計されています。

WAFには、ネットワークベース、ホストベース、クラウドベースの3つの主な種類があります。また、分散サービス拒否(DDoS)攻撃からの保護にも役立ち、個人情報保護法(APPI)などのコンプライアンス要件を満たす上でも重要とされています。AIや機械学習技術との連携、DDoS対策、エンドポイントセキュリティ、SSL/TLS暗号化技術など、他のセキュリティ対策と組み合わせることで、より強固なセキュリティ環境を構築することが可能です。

規制環境

日本のWAF導入に関する規制環境としては、個人情報保護委員会(PPC)が施行する「個人情報の保護に関する法律(APPI)」が挙げられます。これは個人データを扱うWebアプリケーションに対するセキュリティ対策を義務付けています。また、金融庁(FSA)は銀行法に基づくオープンバンキングAPIのセキュリティ要件を含む、銀行・保険業界のWebアプリケーションを規制しています。厚生労働省(MHLW)は、次世代医療基盤整備法に基づき、医療分野のWebアプリケーションのセキュリティを監督しています。

日本市場は、レガシーシステムの近代化という避けられない課題と、新たなテクノロジーへの対応が同時に求められる複雑な状況にあります。WAFは、これらの課題に対応し、企業が安全にデジタルトランスフォーメーションを進める上で不可欠なツールとして、今後もその重要性を増していくでしょう。


ソース元

  • ページタイトル: Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の日本市場(~2031年)、市場規模(銀行・金融サービス・保険、小売、情報技術(IT)・通信)・分析レポートを発表

  • URL: https://www.marketresearch.co.jp

ページトップへ戻る
×