企業動向

ワイヤレスネットワークセキュリティ市場、2035年には945億米ドル規模へ拡大予測


Report Ocean株式会社は、ワイヤレスネットワークセキュリティ市場が2025年の約333億1,000万米ドルから、2035年には約945億5,000万米ドルに拡大するとの調査結果を発表しました。年平均成長率は12.31%と見込まれており、企業ITの無線化やサイバー脅威の高度化が市場成長を牽引しています。

無線化進む企業環境、セキュリティ投資を加速

企業ITにおける無線接続は、従来のオフィスWi-Fiに留まらず、クラウド業務、モバイル端末、IoT、スマートファクトリー、物流設備、医療機器、店舗システム、エッジコンピューティングなど、多岐にわたる基幹インフラへと変化しています。接続ポイントの増加は攻撃対象の拡大を意味するため、企業は無線ネットワークを単なる通信設備としてではなく、ID、端末、データ、アプリケーションへのアクセスを統合的に制御するセキュリティ境界として再設計する必要に迫られていると同社は指摘しています。

アクセス制御の高度化が市場の競争軸に

Wi-Fi 6/6EからWi-Fi 7へと無線通信性能が進化する一方で、企業が直面する課題は通信速度だけではありません。私物端末、業務用スマートフォン、IoTセンサー、監視カメラ、産業機器、来訪者端末など、異なるリスク水準のデバイスが同じ無線環境へ接続することで、認証、暗号化、端末状態確認、ネットワーク分離、異常通信監視をリアルタイムで連携させる必要性が高まっています。特に、正規アクセスポイントを装った不正AP、認証情報の窃取、設定ミス、脆弱なIoT端末を経由した侵入などは、従来型ファイアウォールだけでは十分に抑止できないため、市場の競争軸は「通信を守る製品」から「ユーザーと端末の信頼性を継続的に評価し、必要最小限のアクセスだけを許可する仕組み」へと移行していると分析されています。

ゼロトラストとAIが市場を牽引

市場成長を支える大きなテーマの一つが、ゼロトラスト、Secure Access Service Edge(SASE)、Zero Trust Network Access(ZTNA)とワイヤレスセキュリティの統合です。企業システムがデータセンター中心からSaaS、クラウド、複数拠点、在宅勤務、エッジ環境へ分散したことで、「社内ネットワークに接続しているから安全」という従来の考え方は成立しにくくなりました。これにより、ID認証、アクセス制御、ネットワーク監視、クラウドセキュリティ、エンドポイント保護を統合的に管理できるプラットフォームへの需要が拡大しています。

また、生成AIや機械学習の発展は、ワイヤレスネットワークセキュリティに新たな成長機会をもたらしています。大量の接続ログ、通信パターン、認証履歴、デバイス挙動をAIが学習し、不審なアクセスや異常なデータ転送などを早期に検出する仕組みへの関心が高まっています。AI機能を持つネットワーク検知・対応、セキュリティ分析、統合運用プラットフォームは、今後の高成長領域として存在感を高める可能性があると見られています。

セクター別動向と地域性

2025年には、銀行、金融、保険(BFSI)セクターがデジタルバンキングインフラや決済システム、機密性の高い金融データの保護に向けた投資の増加に支えられ、最大の市場シェアを占めました。一方、IT・通信セグメントは、5Gの展開加速やクラウドの導入、企業のワイヤレス接続の拡大により、最も急速な成長が見込まれています。

地域別では、北アメリカが2025年に世界市場を独占しました。これは、先進的なITインフラ、サイバーセキュリティ技術の早期導入、強固な規制枠組みに加え、企業や政府機関においてゼロトラストやAIを活用した脅威検知、クラウド管理型のワイヤレスセキュリティソリューションの導入が拡大していることによるものです。

IoT拡大と規制強化が新たな需要を生み出す

製造業、医療、小売、物流、公共分野では、IoTの拡大が新たな無線セキュリティ需要を生み出しています。製造現場のセンサー、AGV(無人搬送車)、ロボット、医療現場の患者モニタリング機器など、多種多様なIoTデバイスが無線接続されることで、端末の自動識別、リスクに応じたアクセス権限の付与、マイクロセグメンテーション、暗号化通信、継続的監視などの組み合わせが重要な投資領域となると考えられます。

さらに、EUでは2025年8月からRadio Equipment Directive(RED)のサイバーセキュリティ関連要件が適用され、2026年9月11日からはCyber Resilience Act(CRA)における脆弱性に関する報告義務が適用されるなど、無線機器のセキュリティが「推奨事項」から「市場参入条件」へと変化しています。これらの規制強化は、製品メーカーに対して、販売時点だけでなく、市場投入後の脆弱性監視・対応能力までを求める動きを鮮明にしています。

市場の課題と日本企業への示唆

高成長が期待されるワイヤレスネットワークセキュリティ市場ですが、既存ネットワークとの統合、旧型アクセスポイントやIoT端末への対応、複数ベンダー製品間のポリシー不整合、セキュリティ専門人材の不足などが導入効果を低下させる要因になり得ます。今後は、単一機能の性能だけでなく、既存環境との統合性、可視化能力、自動化、運用支援まで含めた総合的なライフサイクル価値が、企業のベンダー選定における重要な評価基準になると見られています。

日本企業は、この市場拡大を見据え、以下の5つの市場トレンドに注視すべきと同社は提言しています。

  • ゼロトラストとクラウドセキュリティへの移行は、日本企業のワイヤレス環境を「境界防御」から継続的なアクセス管理へ変える可能性があります。

  • 5G・プライベート5G・IoTの普及によって接続端末が増えるなか、企業は「接続・可視化・検知・制御」を包括的に提供できるかが事業機会につながると考えられます。

  • AIを活用したリアルタイム脅威検知と自動対応は、監視業務の効率化やインシデント対応時間の短縮に貢献し、競争優位を塗り替える可能性があります。

  • Wi-Fi環境の高度化とハイブリッドワークの定着は、日本企業のセキュアアクセス投資を押し上げ、ユーザーの場所を問わず安全な接続環境を維持する仕組みが求められています。

  • 2035年に向けて市場が拡大する中、日本企業は「セキュリティ製品販売」から、継続監視、脅威分析、アクセス管理、インシデント対応まで含む継続収益型ビジネスへの転換が求められるでしょう。

Report Ocean株式会社は、市場が2025年の約333億1,000万米ドルから2035年には約945億5,000万米ドルへ拡大するという見通しは、単なるサイバーセキュリティ支出の増加ではなく、無線ネットワークそのものが企業のデジタル事業を支える信頼基盤へ転換していく長期的な構造変化を示していると結んでいます。

ソース元:
Report Ocean株式会社
ワイヤレスネットワークセキュリティ市場、2035年に945億5000万米ドルへ拡大、CAGR 12.31%で加速する無線通信セキュリティの成長戦略
https://www.reportocean.co.jp/industry-reports/wireless-network-security-market

ページトップへ戻る
×