夏季休暇前後にサイバーインシデント相談が3年連続で増加
デジタルデータソリューション株式会社の分析によると、2023年から2025年までの3年間、いずれも夏季休暇中・休暇明けにあたる8月に、不正アクセスやランサムウェア感染などのサイバーインシデントに関する相談件数が増加していることが確認されました。
同社のサイバーフォレンジック調査における相談実績を分析した結果、8月の相談件数は7月と比較して約1.2倍から1.5倍で推移しているといいます。単年の傾向ではなく、3年連続で同様の増加が見られているため、企業は引き続き警戒が必要です。
長期休暇中に高まるサイバーセキュリティリスク
近年、国内で観測されるサイバー攻撃関連通信は高い水準で推移しています。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)によると、2025年に国内で観測されたサイバー攻撃関連通信は、不正アクセスや調査目的の通信を含め、過去10年間で最多となる約7,010億パケットに達しているとのことです。企業を狙ったサイバー攻撃のリスクは日常的に存在しますが、夏季休暇のような対応体制が手薄になる時期は特に狙われやすい傾向にあります。
攻撃者は、休暇期間以前に社内ネットワークへ侵入し、情報収集や権限拡大を進めることがあります。その上で、システム管理者やセキュリティ担当者が不在となる夏季休暇中に、ランサムウェア攻撃や情報窃取を実行するケースが確認されています。通常時とは異なる運用体制下では、異常の発見や初動対応が遅れ、被害が拡大し事業継続に支障をきたす恐れがあります。このため、直前に対策を始めるのではなく、平時から侵入の兆候を把握し、異常発生時に速やかに対応できる体制を整えることが重要です。
企業において、夏季休暇中に特に注意が必要なセキュリティリスクは以下の通りです。
- 不正アクセスの危険性
休暇期間中の監視体制の低下や未適用のセキュリティパッチを悪用され、内部ネットワークへ侵入される恐れがあります。長期間にわたり企業の機密情報が収集され、情報漏えいの被害につながる可能性も指摘されています。 - ランサムウェア攻撃の脅威
システム管理者が不在となる隙を狙い、VPNやリモートアクセスの経路から侵入される可能性があります。ランサムウェアに感染した場合、業務データが暗号化されシステムが利用できなくなり、休暇明けの業務再開に支障をきたす恐れがあります。 - リモートアクセスの増加
休暇中も業務上の都合から、従業員が自宅などで業務を行い、社外から社内システムへアクセスすることがあります。個人のデバイスや、セキュリティ対策が不十分なネットワークからのアクセスにより、組織全体のセキュリティリスクが高まることがあります。 - フィッシング攻撃の増加
休暇中は従業員の警戒心が緩みやすく、その状況を利用して偽装メールから不正なサイトへ誘導する手口が用いられることがあります。認証情報が窃取されると、不正アクセスやランサムウェア攻撃の起点となる恐れがあります。
これらのリスクは、それぞれ単独で発生するとは限りません。不正アクセスやランサムウェア感染、認証情報の窃取などが連鎖的に発生し、情報漏えいや業務停止といった重大な被害へ発展する可能性があります。
サイバーインシデントの被害実例
デジタルデータソリューションがフォレンジック調査を実施した事例として、次のようなケースが報告されています。
ある企業では、従業員が夏季休暇中に業務を行おうとしたところ、業務データが開けない状態となっており、不審なメールも確認されたといいます。ランサムウェアやバックドアなどの不正プログラムが潜んでいる可能性を調査するため、同社が使用する複数のサーバーやパソコン、各種ログを対象にフォレンジック調査が実施されました。
調査の結果、ファイアウォールのVPN機能の脆弱性を悪用され、サーバーへ侵入されていたことが判明しました。さらに、取引先の機密情報や未公開のデザインデータ、報告書、画像など、大量のデータが窃取されていたことも確認されています。その後、窃取した情報の公開を予告する投稿がリークサイト上で確認され、数か月後には実際に情報が公開されるに至りました。
長期休暇前後に確認すべきセキュリティ対策
夏季休暇中のサイバーインシデントは、発見と初動対応の遅れがそのまま被害の大きさに直結するといいます。デジタルデータソリューションが実際に調査した事例でも、休暇前の備えや、休暇中・休暇明けの初動対応が被害の拡大を防ぐ上で重要であることが確認されています。
休暇前の対策
休暇前には、VPNやファイアウォールなど、外部から接続可能な機器に未対応の脆弱性がないかを確認し、必要に応じてアップデートを実施します。あわせて、使われていないアカウントやアクセス権限を停止し、管理者アカウントには多要素認証を導入することが推奨されています。重要データはバックアップを取得するだけでなく、正常に復元できるかまで確認しておく必要があります。また、休暇中に異常が発生した場合に備え、緊急連絡先や初動対応の手順を事前に整理し、関係者間で共有しておくべきです。担当者が不在の場合でも、端末の隔離やアカウントの停止、関係者への連絡などを速やかに行える体制を整えておくことが、被害の拡大防止につながるとされています。
休暇後の対策
休暇明けには、休暇期間中のログやアラート、アカウントの利用履歴を確認し、不審なアクセスやウイルス感染の兆候がないかを点検します。また、休暇中に公開された脆弱性情報を確認し、必要なセキュリティパッチやソフトウェアの更新を実施することも重要です。休暇中に受信したメールを確認する際は、送信元や内容を十分に確認した上で、不審な添付ファイルやリンクを不用意に開かないよう注意することも求められています。
デジタルデータソリューションは今後も、サイバーインシデントの調査・分析によって得た知見を発信するとともに、被害発生時の原因究明や再発防止に向けた支援を通じて、企業の事業継続とサイバーセキュリティ対策の強化に貢献していくとしています。また、夏季休暇をはじめとする長期休暇に向け、平時から対策を講じる重要性を広く伝え、サイバーインシデントによる被害の防止・軽減に取り組む方針です。
ソース
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国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「NICTER観測レポート2025」
https://csl.nict.go.jp/report/NICTER_report_2025.pdf -
デジタルデータソリューション株式会社
https://digitaldata-solution.co.jp/
