SLVがSolanaバリデータ向けBAM運用に対応、機関投資家の利用促進へ
BAMが目指す検証可能な信頼
Jito Labsが開発するBAMは、Solanaが持つ高速なオンチェーン実行の特性に加え、その実行がどのようなルールで行われたのかを後から説明・検証できる状態を実装しようとする取り組みです。
Solanaは高いトランザクション処理能力を持つ一方、ネットワークの成熟と利用主体の拡大に伴い、処理過程のロジックを説明できるかどうかが重要な論点となってきました。特に、機関投資家や業務利用を前提とする主体は、顧客資産を運用するため、取引結果だけでなく、その執行ロジックについて社内リスク管理部門や外部監査人、規制当局に対して説明責任を負います。これは伝統的な金融市場では最良執行の説明やTransaction Cost Analysisの提出といった形で実務として定着している要件です。
現在のオンチェーン実行環境では、トランザクションの順序決定ロジックを外部から第三者が検証することは容易ではないとされます。この説明不能性が、機関投資家がブロックチェーンの利用を躊躇する理由の一つであると考えられています。
BAMは、トランザクションの順序決定を暗号技術によって検証可能な形に近づけることで、この課題に応えようとしています。順序がどのロジックに基づいて処理されたかは証明できる一方で、BAMノードの運用者自身がトランザクションの中身を把握したり、恣意的に順序を操作したりすることはできない設計が採用されています。BAMは特定の運用主体を信頼するモデルではなく、処理ロジックそのものを検証するモデルを目指しており、これによりオンチェーン実行は、高速性に加えて説明可能で監査可能な環境へと近づくとしています。
Solanaの現状とEthereumからの学び
現在のSolanaでは、トランザクションの順序決定に関して高い自由度があり、複数種類のスケジューラが並行して動作しています。この多様性は実験や最適化の余地を生む一方で、外部から見たときに、どのルールで順序が決まったのかを一貫して説明することを難しくしています。たとえすべての運用が善意で行われていたとしても、説明できない、検証できない状態そのものが、機関投資家や業務利用にとっては受け入れられない前提になるといいます。
同様の課題はEthereumでも先行して顕在化しており、proposer-builder separationの導入によってブロック構築の競争が進む中で、ブロックビルダーの集中やオーダーフローの私有化が進行しました。これにより、順序決定の過程が外部から見えにくくなり、長期的には市場の不透明化と集中を招く結果になったと指摘されています。現在のEthereumコミュニティでは、TEEを用いたブロック構築などを通じて、事後的に透明性を取り戻すための取り組みが進められているといいます。BAMは、これらの先行事例を踏まえ、最初から検証可能性と透明性を組み込むことを前提に設計されているとのことです。
SLV v0.9.911が提供する実装上の前進
BAMの思想は、実装され運用できなければ意味を持ちません。SLV v0.9.911は、BAMクライアントの立ち上げと運用をSLVの標準的なフローとして扱えるようにしました。これにより、BAMクライアントへの切り替えが、特定の運用者の知見や個別対応に依存しないものとなります。再現可能な形で導入できることは、検証可能な実行レイヤーを広く普及させるための前提条件であり、本リリースはBAMをSolanaの運用基盤に組み込むための一歩となると説明されています。
リリース詳細については、以下のリンクから確認できます。
Epics DAOバリデータは、SLVを用いてすでにBAMクライアント運用へ移行し、現在も継続して稼働しています。この事実は、BAMが構想段階の取り組みではなく、実際のバリデータ運用に組み込まれた状態で機能していることを示しています。また、バリデータ運用の観点からは、BAMクライアントを用いることで、トランザクションの取り込みおよび順序決定に関するロジックを、バリデータ本体の実行・投票処理から分離できる点も重要であるとされています。これにより、バリデータは実行および投票処理に集中しやすくなり、運用設計の選択肢が広がると考えられます。
今後の展望
BAMが目指す検証可能な順序決定と実行レイヤーの透明性は、Solanaを機関投資家や業務利用も前提にできる実行基盤へ進めるための重要な要素です。SLVは、その方向性を現実の運用に落とし込むための基盤として整備されており、今後もSolanaの運用基盤を継続的に更新していくとしています。
関連リンク:
ソース元:
SLV v0.9.911 で BAM クライアント運用に対応。Solana を機関投資家の利用に耐えうる透明な実行レイヤーへ
https://labo.elsoul.nl/ja/news/2025/12/30/slv-bam-client-support-v0-9-911/
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カテゴリ:企業動向
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