企業動向

デジタルマーケティング統合管理「Trust Lens」発表、年末年始のサイバー攻撃と2026年リスク変化を解説


経営層の説明責任を支える非侵入型サイバーリスク評価

APRIO TECHNOLOGIESの足立氏は、同社が提供するサイバーリスク管理プラットフォーム「Cyber Insight Portal(CIP)」を紹介した。CIPは、企業ドメインを起点にIT資産を自動マッピングし、外部から確認可能な設定不備や公開サービス、漏洩情報、過去の侵害履歴を継続的に収集・分析する。これにより、経営層が判断できる形式でリスクを可視化するという。

足立氏の登壇風景

足立氏は、サイバーインシデントの平均損害額が高水準である一方で、「取締役会がサイバーリスクを積極的に把握できている」と回答した経営幹部が4割未満にとどまる調査結果に言及した。今後12〜18か月で、経営層にサイバーリスクの説明体制を求める規制が順次施行される流れにあると述べた。CIPは非侵入型であり、短時間で初期評価が可能で、継続モニタリングによりリスク変化を自動更新する点が特徴である。また、専門用語を排した4段階カラーのダッシュボードで可視化することで、取締役会での説明責任に耐えうる仕組みを提供すると強調した。

Cyber Insight Portalのダッシュボード画面

年末年始の攻撃動向と2026年に向けたリスク変化

足立氏は年末年始の攻撃動向にも触れた。運用体制が手薄になるこの時期は攻撃側にとって好機であり、昨年は航空・金融・通信などでDDoS攻撃(大量のデータを送りつけ、サービスを停止させる攻撃)が確認されたと説明した。乗っ取られたIoT機器が悪用される例も増えており、オンラインでサービスを提供する企業は業種を問わず影響し得ると指摘。DDoS攻撃への備えとして、平時のトラフィック把握、ログ管理、アラート受信体制、広報・警察への連絡手順などを事前に整える重要性を示した。

フィッシング(偽サイトやメールで個人情報を詐取する手口)は報告件数が最多を更新し続けており、生成AIによる偽装精度の向上と攻撃量の増加が背景にあると解説した。企業側は被害防止に加え、ブランド悪用リスクを踏まえ、広報・カスタマー対応を含めた横断的な備えが必要になると述べた。ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)については、FBIが「1日平均2,000件超の申告」と示しており、日本でもサプライチェーン全体に影響が及ぶ事例が増えているとして、「どこが止まると何が起きるか」を事前に可視化しておくことが復旧コスト抑制につながると強調した。

2026年に向けては、生成AI悪用の高度化、EU AI Actによる透明性要件、インシデント報告の標準化、広告領域でのブランド毀損・アドフラウド(不正な広告表示やクリック)への経営責任の明確化など、複数領域が相互に結びつく流れが加速すると説明。部門ごとに切り離すのではなく、横断的にリスクを可視化し、改善までつなげる仕組みが求められるとまとめた。

攻めのマーケティングを支える「Trust Lens」

後半ではREGAL COREの田之上氏が、同社の広告表現審査ツール「AD Alert」と、APRIO TECHNOLOGIESとの共同開発による新パッケージ「Trust Lens」について説明した。田之上氏は、デジタル広告の運用現場では、薬機法・景品表示法などの法令遵守だけでなく、媒体ごとのガイドラインや新たなトレンドへの対応が求められる一方、担当者の経験に依存した属人的な判断が課題になりやすいと指摘した。AD Alertは、企業ごとのルールと関連法令をデータベース化し、自動で広告表現のリスクを判定することで、審査のばらつきを抑え、継続的なアップデートにも対応できる仕組みを提供していると述べた。

田之上氏の登壇風景

新たに発表された「Trust Lens」は、CIPとAD Alertを組み合わせることで、マーケティング活動におけるコンプライアンスを強化する統合パッケージである。アドフラウド、偽サイト・フィッシングによるブランド毀損、法令違反リスクといった複数の課題が同時に発生しうる中で、「個別に対処していると原因が部門間でたらい回しになり、課題が解決されないまま残るケースがある」と説明した。CIPによる非侵入型の外部監視と、AD Alertによる広告表現チェックを連携させることで、サイバーと広告双方のリスクを一体で把握できると述べた。

Trust Lensは、ウェブサイト改ざんやフィッシングの兆候監視、不正トラフィックの可視化、広告表現の自動審査などを組み合わせ、マーケティング部門と情報システム部門が同じ前提で状況を共有できる点を強調した。「攻めのマーケティングを支えるためには、まず守りの基盤を整えることが必要だ」と述べ、企業の施策を後押しする仕組みとしての位置づけを示した。

関連情報

株式会社REGAL CORE

  • HP:https://regalcore.co.jp/

  • 設立:2021年4月

  • 代表者:田之上 隼人(代表取締役)

  • 住所:東京都渋谷区東3-13-11 A-PLACE恵比寿東 9F

  • 事業内容:コンプライアンスチェック事業

APRIO TECHNOLOGIES LIMITED

  • HP:https://www.aprio.tech/

  • 設立:2023年7月

  • 代表者:足立照嘉(創業者/CEO)

  • 資本金:1億6000万円(2025年1月現在)

  • 住所:71-75 Shelton Street, Covent Garden, London, WC2H 9JQ

  • 社員数:10名

  • 事業内容:英国・欧州の金融セクターはじめとした重要インフラセクターを中心に、事業継続を脅かすサイバーリスクの可視化と影響を分析するサービスなどを提供。また、AIによる「サイバー予見」の技術開発に取り組んでいる。

ソース元:デジタルマーケティング統合管理プラットフォーム「Trust Lens(トラストレンズ)」発表会を開催 年末年始のサイバー攻撃動向と2026年に向けたリスク変化を解説

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著者紹介:press

press プレスリリースを元に、サイバーセキュリティ関連の企業動向を配信しています。情報の正確性についてはソース元をご確認ください。



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