国会図書館、4.4万件流出か 開発中システムに侵入、プリント申込情報など


国立国会図書館は25日、開発中の館内サービスシステムに不正アクセスがあり、利用者ID約940件とプリントアウト申込情報約4万370件(利用者約4360人分)が流出した可能性があると発表した。11月11日に第1報を公表していたが、調査が完了し被害の詳細が判明した。流出した情報には氏名や利用資料名、利用目的などが含まれる。現時点で二次被害は確認されていない。

国立国会図書館「開発中のシステムに対する不正アクセスの発生について(第2報)」より引用

プリント申込者4360人が対象

流出の可能性があるのは2種類。1つ目は2025年3月15日から27日までに関西館を来館した一部利用者の利用者IDのみ943件。2つ目は9月24日から10月22日までに東京本館、関西館、国際子ども図書館のいずれかを来館し、デジタル化資料や電子ジャーナル、マイクロ資料のプリントアウトを申し込んだ利用者4360人分、計4万373件の情報だ。

プリントアウト申込情報に含まれるのは、利用者IDと氏名のほか、資料名、資料掲載URL、デジタルコレクションの資料ID、用紙サイズやカラー・モノクロの別、枚数、金額、利用目的、申込施設、申込端末の管理番号、申込日時、精算日時など。利用者の図書館利用の詳細が含まれる形となった。

第1報から2週間で調査完了

同館は11月11日に不正アクセスの発生を公表していた。今回の第2報で、流出の可能性がある個人情報の範囲について「可能な限りの調査が完了した」としている。

同館は「現在までのところ、個人情報がインターネット等へ公開される等の二次被害は確認されていない」と説明。ただし、利用者に対しては「身に覚えのない不審な電話やメールには応じないよう」注意を呼びかけている。

連絡先未登録者は通知届かず

同館は該当する利用者に個別通知を行う方針だが、現在の連絡先を登録していない利用者には通知が届かない。該当する可能性がある利用者で、自身の情報の状況を知りたい場合は、同館への問い合わせが必要となる。

問い合わせは電子情報部電子情報企画課(電話03-3506-3596、平日午前9時~午後5時、2026年6月末まで)または同館ホームページの問い合わせフォームで受け付ける。

図書館利用履歴の機微性

図書館の利用情報は、個人の思想信条や関心事項を推測できる機微な情報とされる。日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」でも、利用者のプライバシー保護が明記されている。

今回流出した可能性がある情報には、利用者がどの資料をプリントアウトしたか、その利用目的が何だったかといった詳細が含まれており、利用者の研究内容や関心分野が推測できる内容となっている。

開発中システムへの侵入経路は

同館は不正アクセスの対象が「開発中の館内サービスシステム」と説明しているが、具体的な侵入経路や攻撃手法については明らかにしていない。開発段階のシステムはセキュリティ対策が不十分なケースがあり、攻撃者に狙われやすいとされる。

公的機関の情報システムへの不正アクセスは近年増加傾向にある。文化施設や学術機関は予算や人材の制約からセキュリティ対策が後回しになりがちで、攻撃者にとって狙いやすい標的となっている。

国会図書館が謝罪

同館は「当館をご利用の皆様には多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」とコメントしている。

現時点で、漏えいの可能性がある個人情報が悪用される等の二次被害は確認されておりませんが、身に覚えのない不審な電話やメールには応じないよう、ご注意ください。

流出可能性のある情報

▽利用者IDのみ:943件
2025年3月15日~27日に関西館来館者

▽プリントアウト申込情報:40,373件(4,360人分)
2025年9月24日~10月22日に東京本館、関西館、国際子ども図書館でプリント申込をした利用者
内容:利用者ID、氏名、資料情報、印刷製品情報、金額、利用目的、申込施設・端末情報、申込日時、精算日時

問い合わせ先

国立国会図書館 電子情報部 電子情報企画課
電話:03-3506-3596
受付時間:平日9:00~17:00(2026年6月末まで)

著者紹介: CCSIセキュリティメディア編集部

アバター画像サイバーセキュリティメディア、CCSI編集部です。

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