日本のモバイルセキュリティ市場、2030年に12億ドル超えか 脅威増大とキャッシュレス化が牽引
株式会社マーケットリサーチセンターは、日本のモバイルセキュリティ市場が2030年までに12億1,000万米ドルを超える規模に達するという調査レポートを発表しました。モバイルランサムウェアやフィッシング攻撃の増加、キャッシュレス社会への移行などが市場拡大の主要因としています。金融や医療分野での利用拡大、高齢化社会におけるセキュリティ需要の高まりも背景に、多要素認証や生体認証技術の導入が進んでいます。
モバイル技術の進化とセキュリティリスクの顕在化
見出し
日本のモバイルセキュリティ情勢は、2000年代初頭のモバイル技術の先駆的役割とスマートフォンの普及により大きく変化しました。NTTドコモの「iモード」や初期のスマートフォン技術の発展は、モバイルインターネットの普及を促し、日本はモバイル端末特有のサイバーセキュリティリスクに直面した最初の国の一つとなりました。NFCを活用した交通機関や小売向けアプリケーション、QRコードスキャンサービス、モバイル決済プラットフォームの普及は、強固なモバイルセキュリティインフラの必要性をさらに高めています。
過去には、NTTドコモのモバイルサービスやソニーのプレイステーション・ネットワークを標的とした情報漏洩事件が発生しました。これにより、不十分なモバイル防御の危険性が浮き彫りとなり、規制当局による監視強化や、セキュリティインフラへの企業投資増加につながったと報告されています。
多要素認証と生体認証の普及
日本の企業は、生体認証(指紋認証)、OTP(ワンタイムパスワード)、顔認証などの多要素認証(MFA)技術を、企業向けおよび消費者向けモバイルアプリケーションの標準機能として組み込み始めています。特に医療や金融業界では、MFAはセキュリティ層としてだけでなく、規制要件および消費者の期待として定着している状況です。
日本ではモバイル生体認証、特に虹彩スキャン、静脈認証、顔認識技術が主要なイノベーション分野となっています。日本企業は、従来のパスワード使用が困難な高齢ユーザーのニーズを考慮しつつ、デバイスを保護する「摩擦のない」セキュリティ技術の開発を推進しています。高齢化が進む日本において、モバイルヘルス、銀行、通信アプリへの依存度が高まっていることを踏まえると、このイノベーションは不可欠であると指摘されています。
政府と企業の取り組み
政府機関や、NEC、富士通、KDDIといった大手企業による多額の研究開発投資も、日本におけるモバイルセキュリティの拡大に寄与しています。これらの組織は、5G統合型モバイル保護システム、行動ベースの異常検知、モバイル脅威インテリジェンスに関する研究を支援している状況です。
総務省(MIC)は、デジタルインフラのレジリエンス(回復力)の不可欠な要素としてモバイルプラットフォームを優先する国家サイバーセキュリティ計画を後押ししています。モバイルセキュリティの分野、特にAIを活用した脅威検知やセキュアな通信プロトコルにおいては、大学、通信会社、サイバーセキュリティスタートアップ間の連携がイノベーションを促進しているとしています。
主要企業の動向とソリューション
日本のテクノロジー企業は、モバイルセキュリティ市場で重要な役割を果たしています。東京に拠点を置くサイバーセキュリティ業界のリーダーであるトレンドマイクロは、AIを活用したマルウェア検知、アプリの信頼性ランキング、およびエンタープライズ向けモバイルデバイス管理(MDM)により、包括的なモバイル脅威対策を提供しています。
その他の注目すべき企業には、通信事業者やその他の大規模企業向けにモバイルネットワークセキュリティおよびエンドポイント保護の提供を専門とするNECやNTTセキュリティがあります。富士通などもAIベースの脅威インテリジェンスを活用し、マルウェア、フィッシング攻撃、不正アクセスをリアルタイムで検知するソリューションを提供しています。
モバイルセキュリティソリューションは多岐にわたり、アンチウイルスソフトウェア、モバイル脅威防御(MTD)、モバイルデバイス管理(MDM)、アプリスキャンツールなどが挙げられます。特に日本の都市部では、モバイル決済やQRコードベースのプラットフォームが普及していることから、安全なアプリサンドボックス化、暗号化ストレージ、生体認証を保証するソリューションへの需要が高まっています。
各業界でのモバイルセキュリティの必要性
日本では、モバイルバンキングから公共交通機関に至るまで、日常生活のほぼあらゆる側面にスマートフォンが急速に浸透しています。このため、モバイルセキュリティソリューションは不可欠なものとなっています。
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BFSI(銀行・金融サービス・保険)業界: モバイルバンキングやQRコードによるデジタル決済が広く普及しているため、アカウント乗っ取りやフィッシング詐欺の増加に直面し、多要素認証、暗号化された取引、およびモバイルアプリケーションの保護対策が採用されています。
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小売業界: PayPayや楽天ペイなどのプラットフォームを通じたECや店頭でのモバイル決済が大きな割合を占め、POSシステムの脆弱性や顧客データの盗難に対する強力な保護が求められます。
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医療業界: 遠隔医療、遠隔モニタリング、医療記録へのアクセスにモバイル端末が利用されており、国内のプライバシー法に準拠するためにモバイルセキュリティが活用されています。暗号化、アクセス制御、セキュアなメッセージングを用いてアプリ上の機密性の高い患者データを保護しています。
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製造業: 物流、サプライチェーン、および業務の追跡にモバイル端末が活用されており、産業スパイや業務妨害を防ぐためにエンドポイントの保護が重要視されています。
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政府および防衛部門: 現場での通信、電子政府サービス、緊急対応システムを支援するため、モバイルセキュリティに対して高いレベルの保証を必要としています。
中小企業(SMB)においては、社内にサイバーセキュリティの専門知識を持たないケースが多く、リスク評価、モバイルペネトレーションテスト、マネージドセキュリティサービス(MSS)といったサービス活用が増加していると報告されています。
オペレーティングシステム別の動向と課題
日本では、手頃な価格、ソニー、シャープ、富士通など多様なデバイスメーカーの存在、そして企業での広範な導入により、Androidが圧倒的な市場シェアを占めています。しかし、オープンソースであるため、ファームウェアの欠陥、マルウェア、違法なサイドロードアプリなど、より多様な脅威にさらされやすい側面があると指摘されています。トレンドマイクロをはじめとする日本のサイバーセキュリティ企業は、Androidのセキュリティを最優先事項とし、モバイル脅威検知、アプリ審査、安全なモバイルデバイス管理(MDM)ソリューションを提供しています。
一方、AppleのiOSデバイスは、規制された環境と歴史的に攻撃対象領域が狭いことから、日本のハイエンド消費者市場や企業セクター、特に金融、政府、医療業界で広く利用されています。フィッシング詐欺やゼロクリック攻撃の手口が複雑化しているため、日本企業はiPhoneやiPad向けのモバイルエンドポイントセキュリティやセキュアなコンテナ化に投資しています。
個人と企業におけるセキュリティ対策
日本ではスマートフォンの普及率が高く、デジタルリテラシーの低さから、ソーシャルエンジニアリング詐欺、QRコード詐欺、アプリベースのマルウェア、SMSフィッシング(スミッシング)などの脅威にさらされるリスクが高まっています。特に高齢者が頻繁に標的とされており、シンプルでありながら強力なモバイルセキュリティツールが開発されています。トレンドマイクロや、NTTドコモ、KDDIなどの通信事業者は、個人向けにモバイルアンチウイルス、通話フィルタリング、盗難防止ソフト、セキュアブラウジングアプリを提供しています。政府による啓発キャンペーンも個人の安全なモバイル利用習慣を強調しています。
企業においては、モバイルセキュリティが広範なITリスク管理計画の不可欠な要素となっています。パンデミック以降、リモートワークやBYOD(Bring Your Own Device)ポリシーの導入が進み、モバイルデバイス管理(MDM)、モバイル脅威防御(MTD)、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)といったエンタープライズグレードのソリューションの人気が高まっています。これらのツールは、データ漏洩防止(DLP)、日本の個人情報保護法(APPI)への準拠、および内部ガバナンス規則の遵守を確保しつつ、エンドポイントを監視、管理、保護する役割を担っています。
ソース元
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株式会社マーケットリサーチセンター
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市場調査レポート「モバイルセキュリティの日本市場(~2031年)、英文タイトル:Japan Mobile Security Market Overview, 2030」
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