関通、サイバー攻撃からの復旧経験を共有 平将明氏ら専門家とセミナー開催
物流とITオートメーション事業を展開する株式会社関通は2026年1月16日、パートナー企業向けに「サイバーセキュリティ勉強会」を開催しました。衆議院議員の平将明氏をはじめとする専門家が登壇し、同社が2024年に受けたサイバー攻撃からの復旧経験を踏まえ、サプライチェーン全体の防御と具体的な復旧プランについて議論しました。300名を超える参加があり、サイバー脅威への関心の高さが示されました。
開催の背景:サプライチェーンを「全員で守る」決意
見出し
同社は2024年9月に大規模なランサムウェア攻撃を受け、一時は経営危機に直面しました。しかし、全社一丸となって業務を再開し、復旧の道を歩んだ経験から、「攻撃を完全に防ぐことは難しい」という認識に至っています。物流という社会インフラを担う立場として、同社はサイバー攻撃への防衛と備えを、パートナー企業と協力し、サプライチェーン全体で取り組むべき課題と位置付けています。本勉強会は、同社が1年間取り組んできたサイバーセキュリティ強化の実例や、被害当事者としての経験、さらには政策・セキュリティ・調査の専門家の視点を共有し、企業が実践的な備えを構築する場として企画されました。
セミナー概要:AI時代の脅威と実践的対策
平将明氏:能動的サイバー防御の幕開け
特別講演に登壇した衆議院議員の平将明氏は、デジタル大臣および初代サイバー安全保障担当大臣としての経験から、日本のサイバー防衛が「新たなフェーズ」に入ったことを強調しました。国内で約13秒に1回の攻撃が試みられている現状を「まるで自然災害」と表現しています。昨年成立した「サイバー対処能力強化法」により、これまで犯罪捜査に限られていた通信情報の利用分析が、防衛目的でも初めて可能になったという画期的な進展について解説し、「悪さをするサーバーを特定し、警察や自衛隊が無害化できる」と、国が目指す能動的サイバー防御の重要性を語りました。また、サプライチェーン全体の底上げが急務であるとし、政府の支援メニューの活用を呼びかけました。
那須慎二氏:AIが主導するサイバー犯罪
株式会社CISO代表取締役の那須慎二氏は、最新のサイバー犯罪が「ビジネス化」している実態を解説しました。世界中で約1,000億円以上を巻き上げる「サイバー犯罪ユニコーン企業」が存在し、AIを駆使して攻撃を自動化・高度化していると指摘。個人のハッカーが技術を誇示する時代は終わったと警鐘を鳴らしています。特に、Windowsの標準機能を悪用し、ウイルス対策ソフトをすり抜ける「リビング・オフ・ザ・ランド(環境寄生型)」攻撃について解説し、従来の「境界型セキュリティ」には限界があることを明言しました。侵入されることを前提に、いかに早く検知し切り離すかという「EDR(侵害検知)」の重要性と運用方法を伝授しています。EDRとは、Endpoint Detection and Responseの略で、PCやサーバーなどのエンドポイントにおける不審な挙動を検知し、対応するセキュリティソリューションです。攻撃対象は「ネットにつながる全ての企業」に拡大しており、AIによる自動化が進む今、「うちは中小企業だから狙われない」という油断が最大の弱点となると警鐘を鳴らしました。
中村健児氏:ガバナンスと「人」の重要性
元警視庁サイバー犯罪捜査官である株式会社デジタル鑑識研究所の中村健児氏は、実際の被害現場での事例を報告しました。高度な技術以前に潜む「ガバナンスの欠如」を指摘し、管理者パスワードの簡易設定や退職者アカウントの放置などが致命的な穴となっている実態を明らかにしています。中村氏は、「セキュリティは最終的に『人』に行き着く」と強調し、高価な製品導入よりも、それを運用する体制こそが本質であると述べました。また、万が一の際の初動対応として「触るな、落とすな、繋げるな」という三原則を提唱。安易な電源遮断が攻撃痕跡を消し、調査を妨げることを警告し、ネットワークの物理的遮断後、専門家への相談と適切な証拠保全が早期復旧への最短ルートであるとアドバイスしました。
達城利元氏:復旧の当事者としての実践知
株式会社関通のサイバーガバナンス・エグゼクティブ・アドバイザーである達城利元氏は、同社の攻撃発生以降の徹底的な再建プロセスを報告しました。以前からセキュリティ対策に取り組んでいたものの、ランサムウェア攻撃の規模がそれを遥かに凌駕したことに触れ、「攻撃側は24時間365日、AIを駆使して脆弱性を探しており、圧倒的に攻撃側が有利なのが現実だ」と述べました。多くの企業が抱える「何から手を付ければいいか分からない」という悩みに対し、同社が被害を経験し復旧したからこそ、「今、真に何をすべきか、どこが急所なのかが明確に分かっている」と断言しました。全PCへのEDR導入、侵入経路となったVPNの全廃とルーター・通信回線の刷新など、現場目線で「本当に機能する対策」を一つずつ実装した経緯を説明しています。特に、「何分で復旧できるか」という視点を強調し、「『取っているだけのバックアップ』は役に立たない。被害に遭うことを前提に、事業を止めないための復旧訓練を繰り返すこと。この実効性のある備えこそが、同社が身をもって学んだ最大の教訓だ」と、復旧を遂げた実務者としての強い信念を共有しました。
達城久裕社長:経営者の責任と相互扶助の呼びかけ
最後に、2024年に約17億円の被害から事業継続へと導いた当事者として、株式会社関通 代表取締役社長の達城久裕氏が登壇しました。1日の損失が約2,000万円ずつ膨らんでいく緊迫した状況を振り返り、「最初の3日間は倒産を覚悟した。しかし、被害を受けた後の対応こそが企業の生死を分ける。いかに数分で復旧できるかという『プランB』を設計しておくことが経営者の責任だ」と、実体験に基づいた決意を語りました。達城久裕氏は、この教訓を自社だけのものにせず、サプライチェーン全体で共有したいという考えから「サイバーガバナンスラボ」を設立したことを明らかにしました。「守る側にも横の連携が必要。まずは1,000社のネットワークを作りたい。有事にはすぐに助け合える仕組みを構築し、全員で日本のサプライチェーンを守り抜きたい」と、参加したパートナー企業各社へ共闘を呼びかけ、勉強会を締めくくりました。
「サイバーガバナンスラボ」:復旧の知見を全ての企業へ
「サイバーガバナンスラボ」は、2024年に大規模なサイバー攻撃を経験し、復旧を遂げた関通が、自社の復旧過程で培ったノウハウを体系化し、企業の「事業継続(BCP)」を支援するために設立した会員制組織です。多くの企業が抱える「何をしたらいいのかわからない」という課題に対し、現状把握から具体的な対策の実装、有事を想定した復旧訓練までを伴走支援します。
サイバーガバナンスラボの3つの特徴
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実効性のある「プランB(復旧計画)」の構築
単なる防御(侵入させない対策)に留まらず、万が一侵入された場合でも事業を止めない、あるいは最短で復旧させるための「レジリエンス(回復力)」の構築に重点を置いています。 -
被害当事者の視点による伴走支援
同社自身が実際に活用し、効果を実証したセキュリティ対策をパッケージ化。現場目線で本当に必要な対策を、専門家と共に一つずつ実装をサポートします。 -
サプライチェーンを守る「相互扶助」のネットワーク
会員企業同士が最新の脅威情報や対策事例を共有し合えるコミュニティを形成。将来的には、有事の際に迅速な支援や保証が受けられる「守りのネットワーク」の構築を目指しています。
詳細およびお問い合わせは、以下のウェブサイトにて確認できます。
https://kantsu-cgl.com/
参加者の声:実践的対策への高い評価
事後アンケートでは、多くの参加者が「『何をしたらよいか分からない』という言葉に共感した」「管理者が穴になるという指摘に身が引き締まった」と回答しました。攻撃側が有利なAI時代の現実を直視しつつ、実体験に基づいた関通の対策に対し、「実践的で信頼できる」との声が多数寄せられています。
株式会社関通について
株式会社関通は、年間約1,500万個以上の出荷実績を持ち、関西・関東に20拠点を展開する物流会社です。toC・toBを問わず、顧客の受注から庫内物流までのアウトソーシング、倉庫管理システムの販売などを手掛けています。2024年のサイバー攻撃被害の実体験を基に、より強固な物流インフラと組織力で顧客の成長を支援しています。
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会社名:株式会社関通(東証グロース上場)
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本社所在地:兵庫県尼崎市西向島町111-4
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設立:1986年4月
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代表:代表取締役社長 達城 久裕
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事業内容:物流事業・ITオートメーション事業・セキュリティ対策事業(『サイバーガバナンスラボ』の運営・販売を含む)
ソース元: サイバー攻撃から復活を遂げた関通が、平将明氏・専門家らとサイバーセキュリティについてのセミナーを開催しました【2026年1月16日(金)セミナーレポート】
URL: https://www.kantsu.com/news/7737/
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カテゴリ:企業動向
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