仮想通貨投資に誘う国際ロマンス詐欺 後編 次々と現れる被害者たち


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以前の投稿で、仮想通貨・NFTアートに関連した投資詐欺・国際ロマンス詐欺と思われる事例を紹介しました。

この話の続きです。

仮想通貨投資に誘う国際ロマンス詐欺 第1話

被害にあった女性による独自キャンペーン

複数の同じサイトを発見し、これはロマンスではなく投資詐欺だと考えた女性は、まず、警察へ相談に行きました。

警察は話を聞いてくれはしたものの、この段階で詐欺だと断定できる確固たる証明ができない為か、被害届の提出には至りませんでした。

「投資先や彼に頼んでお金を返してもらったら?」というようなことを言われたそうです。

結局、報酬はもちろんのこと預けた投資も、彼女のもとへは戻ってきませんでした。

男にはブロックされ、投資サイトのチャットサポートは機械的な対応のみ。

彼から案内されていたWhat’s Appの投資先のサポートはアメリカの電話番号でしたが、彼女がこのサポートとやりとりする際は、なぜか必ず彼のWhat’s Appもオンラインになるという状態で、とても信用できません。

悔しかった彼女はSNSを使って、この男性についての情報を発信し始めました。

同じ被害にあいそうな人に注意喚起をすることで、被害が広がらないよう呼びかけるキャンペーンを、独自で始めたのです。

彼女はそれをすることで、可能であれば、彼の正体を知りたいとも考えていました。

投資サイトアドレスとhttps://ethereum-v2.net/共に、彼のInstagramに出ていた写真や投資サイトのスクリーンショット等を公開し、各国語で注意喚起しました。

すると、なんと2週間足らずの間に、そのSNSアカウントに複数の方から連絡がありました。

被害者が集まってくる

連絡をしてきたのは、同じサイトへの投資を勧められている男性や女性で、いずれもIsntagram経由で誘いがあったようです。

ただし、それぞれのロマンスの相手は、彼女とロマンスをしていた彼ではありませんでした。

全員が中国系で、NFTアートに加え、ゴルフ、高級車、シンガポールや英語圏での経験等、それぞれに少しずつ共通点がありました。

全て、インスタ映えする豪華な写真投稿と共に、人気のNFTアートのコレクションをしていました。

彼の正体は・・・

彼女とロマンスをしていた男性は誰だったのでしょう。

画像を頼りに調べてみると、写真の男性は、中国在住の美容系ブロガーでした。

ロマンスの最中にはシンガポール在住と言っていましたが、その時期にシンガポールに住んでいる様子は全くありませんでした。

シンガポールでのインスタ映えする彼の生活の写真と同じものが、このブロガーのSNS投稿にあり、そこに記されている地名は、多くが中国国内のものでした。

そもそも彼女を投資に誘った男性がロマンス詐欺師だった場合、自分自身の写真を使って投稿しているとは考えにくく、旅行好きなイケメンブロガーの写真を盗用していたのではないかと思われます。

彼が持っていたとされるNFTアートと取引情報

次に、彼が自分のコレクションだと言って彼女に送っていたNFTアートのページを調べてみました。

彼女はNFTアートに興味を持ち始めたばかりだったのですが、彼がBAYC・村上隆・NIKEといった人気のアートを所持していたことが彼と盛り上がったきっかけだったからです。

彼はOpenSeaというNFTアートのコレクションや取引をするサイトに、自分のコレクションを公開していました。

これが彼のコレクションページです。

2022年1月からOpenSeaに参加しているようです。画面をスクロールすると、沢山のアートを集めていることがわかります。

有名なアーティストのもので、オフィシャルのバッチがついているものもあります。

名前の下に、彼のEthereumでのアドレスが表示されています。Etherscan.ioで彼の取引記録を見てみました。

OpenSeaもEtherscanも広く公開されているものですので、特に必要はないかもしれませんが、ここでの画像では、アドレス部分は一部隠してあります。

これが彼のアドレスのEtherscanの画面です。

NFTのトークンに関する情報は、ERC Token 721 Txsというタブ内に多く表示されます。

これがERC Token 721 Txsタブ内です。

沢山のトークンの記録があります。

いくつか調べていると、5月以前のトークンの詳細に不審な点がありました。

Dusk Topiaという名前でナンバーがついたトークンです。

ページ上部に、アラートのような表示があります。

 This is a fake Dusk Topia token.(これは偽のDusk Topiaトークンです。)

これはFaceXという人気アートの名前のトークンです。

これにも赤い帯で注意が出ています。

 This token is reported to have been used for misleading people into believing it was sent from well-known addresses and may be spam or phishing. Please treat it with caution.

(このトークンは、有名なアドレスから送信されたと誤解させるために使用されていることが報告されており、スパムやフィッシングの可能性があります。注意してお取り扱いください。)

他にもありました。

This token is reported to have been spammed to a large number of addresses. Please treat it with caution.

(このトークンは、大量のアドレスにスパム送信されたことが報告されています。慎重にお取り扱いください。)

このように、次々と注意書きのあるトークンが表示されていました。

また、このアカウントの取引情報でこのような注意書きの出るトークンの多くは、同日のほぼ同時刻に、同じシリーズの作品として大量にこのアカウントが取り扱ったものでした。

6月以降の比較的新しい記録には、注意書きはほとんどありませんでした。取引情報が新しすぎるため、不正に関する報告が少ないのだと推察されます。

このNFTアートのコレクターと頻繁に作品をやりとりしている相手の様子も確認しましたが、やはり同じように偽のトークンと報告されるものを多く扱っていました。

また、この取引相手の記録には、Etherscan内でのブラックリストに入っているアカウントとのやりとりもありました。

もちろん、あくまでやりとりの記録ですので、彼自身や彼の身近な取引相手がブラックリストに入っているわけではありません。

NFTアートの偽トークンについて調べると、有名な作家やブランドのものと偽った偽トークンが数多く出回っているようです。

これを無料配布することで関心を引き、投資やフィッシング詐欺に誘導する手口になっています。

初心者の場合は見分けることが難しく、NFTアートのコレクションや仮想通貨をはじめたばかりの人が狙われます。

更に集まってきた被害情報とSNSなりすましの情報

悔しい気持ちが消えない彼女は、SNSのタグや相互フォローを駆使して情報を拡散し、注意喚起を続けました。

彼女の元には、現在も例の投資サイトに関する問い合わせが届いています。

それだけではありません。

ある男性が、彼女に投資サイトについて問い合わせをしたのですが、その方のロマンス相手は女性でした。

この相手女性はNFTアートに興味があり、やはりシンガポールやゴルフなどの共通点がありました。

同じ犯行グループなのではないかと疑った彼女は、その女性の写真をSNSに掲載しました。

するとある日、投稿写真のご本人と名乗る人物から連絡があったのです。

「誰かが私のソーシャルアカウントを使って騙している、それで困っている」という申し出でした。

「その誰かに直接連絡してみるか、あなたの国の警察に相談して欲しい」と伝えたそうです。

また、彼女がロマンスの相手と出会ったInstagramには、別の知らないアカウントから連絡が来ています。

「Instagramであなたのアカウントをレコメンドされました。私達って知り合いだったっけ?」

という英語のメッセージで、アカウントを見ると、またもやNFTアート好きで、豪華な写真を掲載している人物でした。

キャンペーン開始後2ヵ月近く経過し、彼女のもとには海外からも被害に関する問い合わせが続いています。

韓国人の女性からは

「友人が同じサイトで投資詐欺にあっている。犯人のことを教えて欲しい。」

という連絡がありました。この人の友人は、同じロゴの投資先から、

「投資によってキャピタルゲインがありました。税金を納めなければなりません。あなたのUSDT残額はxxxxxUSDT(99,000USDT以上)となります」

というような通知メールがで、ここから納税の為という名目で個人情報を請求しています。

ロマンスも国際的だったのですが、被害者のネットワークも国際的になってきました。彼女に報告のあった被害者は、全てアジア系の人だという事です。

終わりに

まるで物語のようなこの話は、実際に起こった出来事です。

被害にあった女性の協力により、当サイトでこうして紹介することになりました。

(本人や写真を無断に使われた人達のことを考慮し、SNSの画面キャプチャなどがは掲載できません。)

ロマンス詐欺の被害は、ロマンスの前提があること、相手が外国におり特定できないことなどから、泣き寝入りになることが多いそうです。

NFTアートについては、画像が隠れたNFTアートを無料配布し、それを開くと悪意あるサイトへ誘導される、人気ブランドとよく似た名前のなりすましを行う等の手口が流行っています。

フィッシング詐欺のサイト同様、巧妙な手口で相手を信じさせてしまいます。

彼女が入金したサイトは現在も公開されており、etherscanを見ると、そこには日々ステーブルコインが集まってきています。

このような被害に遭わないよう気を付けましょう。

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